それはきっと、偶然では無かった。


偶然に見せかけた必然

欲に見せかけた求心


近づいてゆく距離

知るたびに軋む心


嗚呼、私たちはあまりにも似すぎていた










My desire for... ― 蜘蛛 ―










「…。」

「…」



淡々と、乱れた服を直してゆく

そこに言葉はない


「…」


直し終え、立ち上がる

先に立ち上がっていた彼を見上げ、少しだけ視線を交あわせた



―――吸い込まれるような瞳。

近くで見つめると迫力は格段に違う

綺麗過ぎて…怖い程の



スッ


「…?」


何か、小さな紙を渡された



「俺の携帯番号とメールアドレスだ」

「…くれるの?何故?」

「お前とは相性が良いらしい。…気が向いたら呼ぶ。来いよ」

「……OK」



彼とは 何より身体の相性が良かった。

それは、今 実感したこと。


( たまには快楽だけに身を委ねるのも悪くない… )


「なァ、艶蝶よ」

「…なぁに?」

「お前は、艶蝶の名に相応しい女だ」

「……ありがとう」



私は、その場を立ち去った。



















“ 艶蝶(えんちょう) ”


名の通り、艶やかな蝶。


――…私の 氷帝での通り名…らしい。


その艶やかな容姿と身体で異性を惑わせるということから、らしい。…に聞いて、初めて知ったけど。

ただ蝶と違うところは…惑わせ、そして喰らうこと らしい。

あながち間違いではないけれど…喰ってるのはあっち。

私はワザと蜘蛛の巣に引っ掛かってやるだけ。


女生徒は私のことを乱蜘蛛(らんぐも)と呼んでいるらしいけれど。


…私は 蜘蛛ではない。獲物を捕まえて、喰らったりなどしない。

けれど…似ているのは事実。





私は馬鹿な蝶。馬鹿な蝶を演じる蜘蛛。





それでも――…求めているモノは 一向に手に入らない。



「( …愛… )」







視界の隅で、アゲハ蝶が一匹 蜘蛛の巣に引っ掛かったのが見えた。









































『生徒会長は、3年1組 跡部 景吾くんに任命します』



全校集会。

面倒臭いと思いつつ、友達に連れてこられしょうがなく出席


( …気持ち悪い )


人が多いのは嫌いだ

多々の呼吸の音と、好意と羨望、悪意、憎悪といった様々な視線

…ああ、煩わしいことこの上ない。



『そして次に 生徒会副会長は、3年5組  さんに任命します』



マイクを通じて発せられた言葉に、一瞬 思考が停止した



?アンタ…」

「…なに、ソレ」

「え、知らないの?」

「全然知らないわ。…確か、生徒会って会長以外は会長が決めるのよね?」

「うん」

「…跡部…」

「えーって跡部様と知り合いだったの!?」

「……別に。知り合いって程じゃないわ。
 この間授業中に屋上に続く階段の踊り場でが盛ってたらそこに跡部が現れて
 が逃げて代わりに跡部とヤッただけ」

「……は?あんた…跡部様とヤッたの?」

「まぁ、一応。」

「…さすが艶蝶、ね。帝王様もメじゃないって?」



帝王というのは、艶蝶と同じく、跡部の通り名だ


「別に。そういうわけじゃないわ」


横で「あーあ。あたしも跡部様みたいな人に抱かれてみたーい」とか言っているのを聞き流し、

壇上で生徒会員を発表してる生徒会顧問の横に座る跡部を見据える。

かなり離れているというのに、跡部はその視線に気付いたのか、こちらを向き 視線が重なった



「( 何考えてるの?帝王様――… )」

「( 別に。ただ、この方が楽しいかと思ってな。艶蝶 )」

「( 私を楽しみの道具にする気? )」

「( そうだ。…だが、お前も楽しめるだろう? )」

「( 面倒臭い事は嫌いなの )」

「( そういうな。すぐに慣れる )」



素晴らしい程のアイコンタクト。

彼の考えていることが、手に取るように分かってしまった。




「( 似てるのかしらね、私たち―― )」




「( -------- )」








































そ れ だ け は 、 彼 が 何 を 思 っ た の か 知 る こ と は 出 来 な か っ た け れ ど 。






















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( 06,08,05 ) ( ヒロイン、生徒会執行部に入部。 )